塾講師吉田のブログ

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『大学入試 肘井学の 読解のための英文法が面白いほどわかる本 必修編』

参考書レビュー

 

書誌情報

著者:肘井学

タイトル:大学入試 肘井学の 読解のための英文法が面白いほどわかる本 必修編

出版社:KADOKAWA

ISBN-13  : 978-4046050564

 

概要

全5章、全33テーマから構成されています。

序章では「SVの発見」が主題となっており、SVの発見が難しい英文から、それを見抜く方法が書かれています。

第1章では「意味のカタマリ」が主題となっています。名詞句を例に上げると、名詞句になるのはどういう場合なのか、そしてその文中での役割は何なのか、こうしたことが説明されています。

第2章では「識別」が主題となっています。例えば英文中にingが登場したとき、それが動名詞なのか、現在分詞なのか、進行形の一部なのか。それぞれ役割は異なるので、識別が出来なければ、英文の意味を理解できません。この章は本書の中で最も重要な部分であると言えます。

第3章では「構文」が取り上げられています。倒置や省略、比較など英語学習者にとって苦手な箇所が分かりやすく説明されています。そこまで難しい構文はなく、どれも必修レベルで抑えておきたいところです。

第4章では「動詞の型」として、従来の5文型に収まらない、動詞の型について説明されています。例えば「SV A from B」型であれば、意味のパターンを2つに分け、それぞれのパターンに当てはまる動詞が紹介されています。いわゆる「熟語」として一つ一つ覚えていくよりも、本書のようにパターンに分けてグループで覚えていくほうが効果的だと思います。

 

使い方など

使用時期:基盤力養成期間

レベル:高校初級

注意点:本書は必ず高校初級レベルの英文法を一通り終えてから使ってください。もちろん完璧でなくても大丈夫です。ある程度で問題ありません。目安としては、初級レベルの英文法の参考書を2~3周したくらいでしょうか。文法用語そのものの細かい説明は本書には無く、ある程度の文法力を前提として書かれています。非常に理解しやすく覚えやすい記述なのですが、文法用語が分かっていないと、なかなか身に着いていきません。

使用方法:本書の指示通りに「例題」を考え、解答解説を見ていきます。例題の訳文を書く必要はありません。解答解説はまず理解できるかどうかを重視しますが、あまり理解出来ない場合でも、後々周回することを考えて、ひとまず先に進みましょう。「確認問題」は1~2周目のときにはパスしても構いません。初めから完璧にやっていこうとするとかえって上手くいきません。まずはうっすらとでも全体像を掴むために、なるべく早く1周を終えてください。

 3周目あたりからは「確認問題」もやっていきましょう。このとき必ず訳文を紙に書いて下さい。そして解答解説を読んで自分の読解が正しかったかどうか確認します。「発展問題」については全くやらなくても問題ありません。英文の前後が無くて内容が不明瞭なものがまずまずあり、ほとんどの学習者にとっては学習効率を下げる可能性が高いです。信頼できる指導者に気軽に質問できる環境にいる人はやってみても良いでしょう。

 音声ダウンロードに関しては、「無理してやらなくても良い」、というのが私の意見です。まず例題については巻末に一覧があるので、音声を聞きながら音読していくのに便利な仕様になっていますが、確認問題についてはそうなってはいません。またアプリも使いにくいとまでは言いませんが、世の中にはもっと使いやすいものがたくさんあります。リスニングなどの練習をするには別の教材で構わないと思います。

 全体を通して最低でも5周は行いましょう。1日90分の学習時間で考えると、10日から2週間で1周するペースが丁度良いと思います。本書をしっかりと身につければ、共通テストレベルくらいまでは読解で困ることはほとんどないでしょう(もちろん単語もあわせて必要ではありますが)。さらに効果的に身につく方法として、復習を度々することをお薦めします。例えば高校1年生の夏頃に、本書を5周して終えたとします。その後長文問題集を一冊終えたら、次の問題集に移る前に本書の復習を挟んでみる。あるいは冬休みなど学習時間が取れるときに、長文問題と並行して本書の復習を行うなど。

 

この本は非常に素晴らしい本です。私も高校生に指導する際、各々本書を購入して使用してもらっています。塾講師としての現場で数年間の使用実績があり、自信を持って推薦できる一冊です。