塾講師吉田のブログ

宮城県で塾講師をしています

内申重視は正しいのか?

大学入試ならともかく、事実上義務教育の延長である高校において、入試で内申が問われるのは至極当然だと思います。とはいえ完璧な制度など存在しません。入試制度もその都度、見直しが必要です。ここでは塾講師目線から現状の内申制度について色々と書いてみます。

 

【評価できる点】

①生徒に普段から勉強させることができる

地方の公立トップ校の場合、合格者ほとんどは平均評定が良く、入試の点数もかなり良い方が多いです。もちろん評定が悪くて入試の点数が良い、あるいはその逆の方もいるでしょう。しかし経験上そういう方はそれほど多くありません。

正確な統計的なデータがあるわけではないのですが、恐らくはまずまずの正の相関にあると思います。

考えてみると、内申点のために、定期テストで良い点数を取ろうと勉強し、授業にも積極的に参加し、提出物もきちんと仕上げて出すわけです、生徒に定期テスト前だけでなく、普段から「勉強させる」装置として内申は機能していると言えるでしょう。

 

②内申は地域格差を埋める

同じ県内でも、中心部に近い地域とそうでない地域があります。言葉は悪いですが、それぞれ都会と田舎と便宜上呼びます。都会の生徒達は塾へのアクセスが容易でかつ家庭が裕福である傾向があります。一方田舎の生徒達はその逆の傾向があります(あくまでも「傾向」です)。

ですが、内申点については都会の生徒達の方がやや低めに出されるのに対して、田舎の生徒達の方がやや高めに出されます。都会の生徒達は塾に通う方が多いので、定期テストの点数が学年全体で高くなります。それゆえ定期テストの点数が高いことが内申においてそれほどアドバンテージになりません。一方田舎では状況がその逆になります。塾に通う生徒が少ないので、定期テストの点数も学年全体でそれほど高くならず、定期テストの点数が高いことが内申においてアドバンテージになります。

また関連して、都会の中学での定期テストは難しいことが多く、田舎の中学での定期テストは簡単になる傾向もあります。そのため模試などのテストでは、普段から難しいテストで慣れている都会の生徒が学力上位を占めることになります。

以上をまとめると、都会の生徒は入試で点数が高いが内申は低い傾向に、田舎の生徒は入試で点数が低いが内申は高い傾向になります。

住んでいる地域や家庭の年収が、子供の学力に影響していることは、徐々に指摘されて始めています。内申を入試の点数に含めて考えることで、こうした地域による教育格差をある程度は埋めてくれている、と言えます。

 

【疑問点】

①勉強は何のためにするのか

そもそも勉強や学習は何のためにするのでしょうか?

内申制度は、もともとペーパーテストのためだけに勉強する、ということに対するアンチテーゼとして考えられたはずです。しかし現状では、「先生に評価される」ために生徒達は勉強せざるを得ないように思われます。「テストの点数のため」が「先生の評価のため」に変わっただけです。義務教育を始めとした公教育の目的が一体何であるのか、ますます分からなくなります。そうした目的のために勉強してきた生徒達が、大人になって自発的に何かを学ぼうとするでしょうか。

 

②主観的な評価

ペーパーテストは客観的な評価です。一方で内申はどうしても主観的な評価にならざるを得ません。学校の先生も人間なので、どうしても好き嫌いは生まれます。

ある生徒を一度「不真面目」と認識してしまうと、その生徒に対する評価は低くなりがちです。また、人前で話すのが苦手という生徒にとって、授業中に挙手して発言することは難しいです。しかしこれが先生から「授業に対して消極的」と認識される可能性があります。その生徒は懸命に授業に参加しようとしているにもかかわらず!

さてこれらは無視しても良いレアケースであって、内申の評価は、教師の先入観や偏見無しに上手く機能していると言えるのでしょうか。

「男子よりも女子の方が内申が良い」恐らくだれもが一度は聞いたことがあるでしょう。そうした統計的データはありませんが、もはや公然の秘密です。塾で教えている私も実際にそうした事例を見てきました。もしその男女差が偶然ではなく、統計上はっきりとした有意義な差があるとしたらどうでしょうか。この場合、少なくとも2つの解釈があり得ます。1つは、内申評価において「女子は元々優れていて男子は元々劣っている」とするもの。もしこれが正しいのならばスポーツや体育競技と同様に、男女別で競争しなければなりません。もう一つは、内申評価において「女子が不当に高評価され男子が不当に低評価されている」とするもの。もしこれが正しいのならば、男女の賃金格差と同様に是正されるべき社会的問題です。

上記のことはきちんとした統計データが存在することが前提の話です。本来であれば教育委員会がきちんと調査するべき事だと思います。現場の先生方の多くはきちんとやっておられると思います。でもどうしても主観が入り込むのは仕方のない話です。

 

私見

内申を高校入試に用いるのは基本的には賛成です。県によって多少の違いはあるとは思いますが、実は「内申をそれほど重視しない枠」が設けられていたりします。また上位校では内申の割合が3割で、内申のビハインドを入試のテストで挽回できる余地はそれなりにあります。内申には中学3年間の努力が反映されているという建前にはそれなりの説得力がありますし、高校が事実上義務教育の延長ということをあわせて考えると、内申無しで全て入試テスト一発勝負で決めるという考えは少し異常な考えだと思います。

とはいえその内申評価が、評価する側の先入観や偏見が完全に排除されているわけでもないし、男女間で明確な差があるのではないかという疑念も存在します。これらの問題について何らかの対策がなされていないようにみえる現状では、内申評価に対して否定的な見方をとる人が相当数いることは驚くべきことではありません。

もう挫折しない!参考書の選び方と使い方

参考書をやり遂げられずに挫折した経験はありませんか?

費やしていた時間が、全くではないけど、かなり無駄になってしまいますよね。

ここでは挫折する要因とその対策について考えてみました。

 

【要因1】参考書のレベルが自分の学力より高すぎる

【対策1】自分の実力と思われるレベルより1つ下のレベルのものを選ぶ

私の経験から言うと、参考書を選ぶ際には「5割以上わかるもの」を基準に選ぶと上手くいきます。その本に書かれている内容の半分が分からない状態で始めると、相当きつく感じます。学問研究をするならそれでも良いのですが、所詮大学受験です。苦しさなどのネガティヴな感情はできる限り排除して、効率良くやれば良いのです。

一段下のレベルの参考書を選び、一通りやってみたらほぼ全て理解していた、ということもあるかもしれません。こういう場合はその時間は無駄になったのでしょうか。もちろん違います。これは、基本事項を改めて固めることができた、と捉えれば良いのです。さらに、このレベルはきちんと身に着いていた、と自信にもなりますし、自分のレベルを客観的に把握することもできます。

 

【要因2】参考書の容量(ページ数・問題数)が多すぎる

【対策2a】周回ごとに増やしていく

参考書に書かれている事柄が難易度分けされているとします。例えば、基本・標準・発展やA問題・B問題・C問題といった形です。

こうしたケースではまず最初の1~2周目に基本(A問題)だけやっていきます。

次に3~4周目に基本と標準(A問題とB問題)をやっていきます。

そして5~6周目になってようやく全部に取り組んでいきます。

つまり周回を重ねる毎に、するべき事の量を増やしていくわけです。当たり前の話ですが、最初の一周がとにかく大変なのです。このやり方であればその最初の一周を比較的楽に終えることができます。これにより全体像を概観できますし、なによりちょっとした自信を得ることもできます。

仮に2周で力尽きたとしても、基本(A問題)は2回やったわけですから、それで一応は何かを得られるのも利点の1つです。

【対策2a】パート毎に攻略していく

参考書は大体複数の章(パート)で構成されています。

1章やったら2章へ、2章やったら3章へ…ではなく、とりあえずどこか1つの章を何回か繰り返してその章を定着させます。大抵は最初の章を選ぶことになるかもしれませんが、各章の独立性が強い場合は自分がやりたい章からでも大丈夫です。

結果的にどこか1つの章しか出来なかったとしても、つまり挫折してしまったとしても、その1つの章からは得るものがあったはずです。

 

 

時間を費やしたけど何も学べなかった、何も身についていなかった、こういうのが最悪な状態です。上記のような対策を施すことによって最悪の状況は避けられます。是非試してみて下さい。

 

『肘井学のゼロから英文法が面白いほどわかる本』

書誌情報

著者:肘井学

タイトル:大学入試 肘井学の ゼロから英文法が面白いほどわかる本

出版社:KADOKAWA

 

構成

各章の始めにその章で扱う文法事項の全体像を概観できる「見取り図」があります。

見開き(2ページ)で1つの文法パートが取り上げられています。

まず左ページ上部に、覚えなければならないポイントが提示されます。その下に基本的な例文があり、さらに簡潔な説明が加えられています。

右ページには簡単な練習問題があり、左ページで学んだことを確認できます。練習問題の解答、その問題を解くのに必要とされる知識だけが簡潔に示されています。

第0章 中学の総復習(1~12講)

第1章 文型(13~19講)

第2章 時制(20~26講)

第3章 助動詞(27~34講)

第4章 仮定法(35~41講)

第5章 受動態(42~46講)

第6章 不定詞(47~51講)

第7章 動名詞(52~56講)

第8章 分詞(57~60講)

第9章 準動詞(61~64講)

第10章 関係詞(65~71講)

第11章 比較(72~77講)

 

特徴

本書の特徴の1つは視認性の良さにあると思います。左ページのポイント・例文・説明には、共通する事柄で色分けがされています。例えば現在完了形の項目を見ると、ポイントで「継続用法」が黄色で書かれています。そして例文で継続用法が使われている部分が黄色でマーカーされていて、説明箇所でも「継続用法」が黄色がマーカーされています。これによりポイント・例文・説明の対応関係が視覚的に非常にわかりやすくなっています。

2つ目は説明の簡潔さです。詳しい説明が常に正しいとは限りません。冗長な説明がかえって学習者にとって負担になることもあるからです。その点、本書は要点がわかりやすく短くまとめられています。途中で飽きて投げ出してしまう、ということも起こりにくいと思われます。

 

使い方など

使用時期:基盤力養成期間

レベル:高校入門~高校初級

 

注意点:中学レベルに不安があっても使用できる参考書ですが、それでも下限はあります。be動詞と一般動詞の区別や、人称代名詞や疑問詞の使い方など、中学1年で学習する事柄も怪しい方には、本書の使用は難しいでしょう。その場合は中学生用の参考書で勉強して下さい。

 本書は見やすくて分かりやすい反面、定着させるのは少し難しいかもしれません。右ページの練習問題がかなり簡単で、意識しないと頭を使わずに機械的に解くだけになりがちです。本書を「理解用」と割り切って別の問題集を使うか、あるいは後述のように一工夫して文法事項の定着を図りましょう。

 

使用方法:1日30~60分くらいの学習時間を想定しています。

【1,2周目】各章始めのイントロと、各講の左ページだけ読み進めていく(右ページの確認問題はやらない)。まずは素早く全体を見てみることが大事です。この段階では覚えられなくても問題ありません。一周を5~7日で終わらせましょう。

【3~5周目】左ページを読んだら、右ページの確認問題にも取り組みます。1講ごとに答え合わせを行い、その都度必要な知識を確認していきましょう。1周を10~14日で終わらせるペースで進めると良いでしょう。

【6~8周目】まず右ページの確認問題を先に解きます。そして解答解説のチェックが終わってから、左ページを読んで下さい。こうすることで、「今現在完了の説明読んだから、問題でも現在完了が出されるだろう」といった先入観や解答の予測を、ある程度排除できます。1周を10~14日で終わらせることができるでしょう。

 

付録には「口頭英作文トレーニング」として本の中で出てきた英文とその和訳が一覧として収められており、アプリで音声を聞くことが出来ます。

もちろん音声を利用すれば学習効果は高まりますが、無理して使う必要はありません。アプリの方は使いにくいわけではありませんが、取り立てて素晴らしいアプリ、という程でもありません。音声の流し方をカスタマイズ(例えば日本語音声を無しにできる、英文を2回連続読みなど)できれば非常に良かったのですが。

 

『基礎からの数学Ⅰ+A Express』

書誌情報

著者:福島國光

タイトル:大学入試短期集中ゼミ 基礎からの数学Ⅰ+A EXpress

出版社:実教出版

*年度毎に新版が出ますがほとんど変わりません

 

構成

1ページにつき、例題・練習・Challengの3段階の問題が配置されています(ただし23にはChallengeがありません)。各例題の後には、解法のアドバイスや公式の確認、テクニックの紹介などがあります

「数と式」(1~10)

「2次関数」(11~30)

「集合と論理」(31~35)

「図形と計量」(36~47)

「データの分析」(48~52)

「場合の数と確率」(53~73)

「図形の性質」(74~80)

「数学と人間の活動」(81~86)

 

特徴

とにかくその薄さが最大のポイントです。分厚い参考書では挫折してしまった方でも、この本ならば最後までやり遂げられるでしょう。

例題や練習の難易度は、教科書の例題や練習問題、あるいは教科書傍用問題集のA問題と同程度です。Challengeの難易度は、教科書の章末問題、あるいは教科書傍用問題集のB問題と同程度です。

解答自体は必要最小限ですが、解答の右側に解き方・考え方の注釈があるので、全体として解説は分かりやすいものとなっています。

 

使い方など

使用時期:基盤力養成期間

レベル:高校初級

 

注意点:公式を覚えるための計算練習には向いていません。ですので、計算力や基本的な公式をこれから身に着けよう、という方は別の参考書を選びましょう。

向いているのは例えば、

①学校で教科書中心にそれなりにやってはいるが、テストの点数にあまり反映されていない方です。こういう方は勉強量が少なくはないのですが、抑えるべきことに学習を集中できていない傾向があります。それゆえ本書のようなポイントをしぼった問題集で学習の効率を上げることができます。

②高3の文系で1Aを手っ取り早く復習したい方です。高3になると学校の授業は演習中心になると思いますので、その前にやっておくとさらに効果は高いですね。

 

使用方法:例題を見て、既知の事柄かどうか確認します。もし少し引っかかるようであれば、紙にきちんと書いてみましょう。しっかり理解できていれば、そのまま練習を解いて自身の解き方をチェックしてください。Challengeは次の周回からやることとしていったんスキップしても大丈夫です。

2周目からは、例題を何かで隠して見えないようにして、練習から解き始めましょう。ここで出来なかった問題は例題も含めて復習する必要があります。練習が解けた場合にはChallengeにも取り組むと良いでしょう。

3周目は間違った練習問題と、全てのChallengを解きます。

 

 

基本かつ重要な問題が掲載されていますが、本書で通用する入試のレベルは地方私大程度だと思います。数学を受験に使う方は、共通テストのみの文系も含めて、さらにもう1段階上の勉強をしなければ対応できません。

ここが変だよ自称進学校

「自称進学校」という言葉をご存知ですか?

いわゆる「進学校」は、他者からも進学校と認められるのに対して、自称進学校はあくまでも「自称」なのだ、というやや蔑称的なニュアンスがありますね。

何をもって進学校なのか、それとも自称進学校なのか、判断するのは難しい。しかしながら、高校生達の話を聞くとある興味深い事実?が発覚しました。

ちなみに地方の政令指定都市での話です。

 

1. 課題が多い

とにかく課題が多いです。私から受験勉強をするよう指示しても、学校の課題が多すぎて受験勉強できないと言う生徒が結構います。その課題が、本人の受験につながるようなものであれば良いですが、たいていはそうではないのが非常に残念なところです。個人個人、スタート地点もゴール地点も違うので、全員同一の課題ではどこかでミスマッチが起きるのは必然ですから。

これに対して進学校は課題がほとんど無いか、あるいは課題をしなくても何も言われません。自分自身の判断で取捨選択して学習することが求められているのでしょう。

 

2. 国立至上主義

これも「あるある」だと思います。確かに高校の大学進学実績を考えると、一人でいくつも合格できる私立大学よりも、原則一人一つしか合格できない国立大学の方が実績としてはカウントしやすい、ということあります。さらに地方だと、「高校は私立よりも公立が良い」という謎の風潮が親世代には未だ存在し、大学でも似たような風潮があることも拍車をかけているでしょう。自称進学校の進路指導では、国立大を受験することが既定路線です。ではその路線から外れて私立専願にすると…とても恐ろしいことが?

一方進学校では「行きたいところに行け」と、本人の意志が尊重されています。単に放任されている、とも言えますが。基本的に教師は生徒の進路に口を出してきません。

 

3.塾や予備校を敵視している

しかし模試は利用する!

よくある口癖の1つで「学校の授業で十分だ!」というものがあります。学校の授業は大学に合格するための十分条件だった!?

実際のところ、若い先生はそうでもないですが、ベテランの先生だと時代柄、塾や予備校に行かずに大学合格した人は多いと思います。しかもみな揃って高学歴だったりします。地元の有名(自称)進学校から、地元の国立大へ、そして母校を始め地元の高校で教師となる。この経歴の方想像以上に多いです。優秀なご自身の成功体験に裏付けられて、塾・予備校不要論を唱えているのではないでしょうか。

塾・予備校の人間でも高校を敵視する人はそこそこいるようですね。よくある手口で、自分達に自信が無いから、他者をこき下ろして相対的に自分を優位に見せているわけです。そもそも高校などの公教育と、塾や予備校などの私教育では、そのあり方が違うのだから双方棲み分けすれば良いだけの話です。

進学校では生徒が塾や予備校に通って文句をつけられることなどあり得ません。課外授業もほとんど無いか、任意なので、自分で塾や予備校を上手に利用していくことができます。なお、自称進学校での課外授業は実質的に強制であるところが多いらしいです。

 

 

進学校と自称進学校には、自由があるかないか、自主性を重んじるかどうか、いった点に違いがあるようです。

周知のように強制されて勉強しても、実はあんまり伸びないのです。自ら望んで管理型教育を受け入れるのとは全然違います。

義務付けられた課題など、いい加減に答えを埋めるだけで復習はもちろんしない。アリバイ作りのために、先生に怒られないために勉強をした「フリ」をする。時間だけが過ぎていき、大して身についてもいない。

自称進学校も入学するのはなかなか難しいところばかりです。生徒には優秀な方もたくさんいます。難関大学に合格しているのは、元々良く出来る生徒達なのでは?生存バイアス以外の何物でもないような気がします。

 

『現代文の解法』

書誌情報

著者:中西実

タイトル:現代文の解法 読める!解ける!ルール36

出版社:Z会

 

構成

第1章では「文章を読むとはどういうことか」を簡潔に説明しています。

第2章では評論文における9つの読み方を、第3章では小説における3つの読み方が解説されています。

第4章はそれまでに学んだ解法を試せるように、8つの練習問題が掲載されています。

第2章と第3章で扱われる読み方については、その各々について3つのルールが紹介されます。そしてそのルールがどのように適用されているのかを例文を通して確認しています。その後に短くて簡単な練習問題が3題用意され、解答解説ではルールを適用して正答を導く方法が示されます。

 

特徴

初級者が現代文の参考書を使う時に、立ちはだかる2つの問題があります。それは、1つのパートを学習するのに時間がかかりすぎることと、解説や説明が長すぎてよく解らないことです。これらは根は同じだと思います。読解力が不足しているから現代文を勉強しようとしているのに、現代文の参考書を使用するのに読解力が要求されるという、パラドックス的な状況に陥ってしまうことです。

しかしながら本書にはそういう問題はほとんどありません。一見するとわかるように、1ページごとの文字量はかなり少なく、また図式を用いて説明されているので、読むことが苦手な方でも安心して使用できます。また1つのパートも短く、各章の練習問題も1問あたり3~7分の制限時間が設けられているため、毎日少しの勉強時間でも問題無く進めていくことができます。

 

使い方など

使用時期:基盤力養成期間

レベル:高校入門~高校初級

注意点:視覚的に非常に分かりやすいために、わかった気になりかねません。これを防ぐためには、あえてゆっくりと読んでみたり、通読回数を増やしてみたりすると良いでしょう。

記述式の問題がほとんどないので、国立二次対策などには他の参考書も必要になります。また共通テスト対策にもこれだけでは不足するでしょう。あくまでも現代文の勉強の初歩段階にあることを忘れないで下さい。

使用方法:まず第1章は分量も少なく、内容も小学生や中学生の国文法で学んできたことなので、購入した日に2,3回読んでおけば大丈夫でしょう。

メインとなるのは第2章と第3章で、ここには12の読み方が説明されています。1日30分弱の学習時間で、1つの読み方のパートを終えることができ、2週間で2章と3章を1周できます。1日60分弱の勉強時間ならば、1週間で1周ですね。まずはこれらの章を3周します。

第4章は練習問題が8問あり、1問10分の制限時間があります。解説の読み込みを含めると合わせて20分程度かかるでしょう。1~2週間で、第4章を2周行います。

上記のように、1日60分であれば4週間程度、30分であれば8週間程度でひとまずは仕上げることができます。ですがここからさらに3~6ヶ月後にもう一度復習しておくことをお薦めします。例えば、高1の夏休みに本書に取り組んで終わらせ、その後冬休みや春休みにまた本書を引っ張り出してくる、といった感じです。

 

理系の方で現代文に時間をかけられない場合、使用する参考書を厳選して効率よく使用していく必要があります。そうした方の一冊目として特にお薦めできます。

難関大学を目指す文系の方でも、いきなり分厚くて難しめの参考書に挑戦するのではなく、まずは本書から徐々にステップアップしていく方が結局は合格への近道になると思います。

 

大学生の発信する受験情報は信用できるか?

YOUTUBEを初め、ネット上には受験情報が氾濫しています。それらのうちどれが信用できて、どれが信用できないのか。未だ受験を経験していない、合格したことのない受験生にとって判断することは非常に難しいことです。

 

問題点

1.指導経験が無いあるいは少ない

受験を通じて得た勉強方法が、自分以外の他人にも通用すると無邪気に信じているのであれば、それはあまりにも愚かとしか言いようがありません。その勉強方法のうちどれが効果があり、どれが効果がなかったか、合格した人間がそのようなことを本気で検証するでしょうか。

そうした検証は自分自身に対して行うことは出来ません。過去に戻って対象実験など無理なのですから。ということは結局、言い方は悪いですが、他人で試すしか方法はないのです。大学生になってアルバイトで塾講師や家庭教師をしても、検証に充分なくらいの数の受験生を教えることは1年2年では難しいです。また指導経験の年数が少ないと、同じ生徒を複数年担当して大学受験を迎える経験も少ないわけです。2年や3年計画で大学受験するノウハウが不足しています。

 

2.学歴が高すぎる。

受験情報を発信する大学生のほとんどの方が高学歴です。東大京大、医学部、早慶上智などなど。GMARCHあたりの方はあまりいませんし、中堅私大の方はほとんどゼロに近いでしょう。

現在の学力があまり高くなくて、中堅の私大や地方の公立大などを志望している場合、あまりにも高学歴すぎる大学生の情報は参考になりません。難関大学に合格する方はやはり高校入学時点で学力がかなり高い人が多いです。受験勉強のゴールも違うしスタート地点も違うのです。

受験情報をインターネットなどで仕入れる必要性がある方は、地方在住であったり、進学校でなかったりする場合が多いと思います。そうした受験生にとって本当に必要な情報は「東大に受かった勉強方法」などではなく、「共通テストで7割取る勉強方法」ではないでしょうか。

 

3.プロではない

プロより優れたアマチュアは無数にいます。しかしプロをアマチュアでは一つの決定的な違いがあります。それは技術を対価に金銭を受け取ることであり、そこには責任が発生します。

私達プロは、生徒の合格も不合格も何度も経験しています。そして私に成長する機会を与えてくれたのは、紛れもなく不合格だった生徒たちです。真剣に仕事に取り組んでいるからこそ、不合格の生徒の事例から、真摯に反省し指導方法・学習方法の再検証を行うのです。そしてそのような経験を積み重ねて、実績があり、自信が持てる方法を他の受験生の方々に伝えているわけです。

 

 

対処方法・情報の取捨選択

問題点を簡単に指摘して来ましたが、悪いことばかりではありません。大学生の発信する情報にも良いことがあります。

1.モチベーション維持に利用する

高校生にとって大学生はある意味憧れの存在です。そうした方々から、実際の大学の雰囲気や、受験時代の苦労を乗り切った話など、自分のやる気アップにつながる話が聞けると思います。

また年齢が近いということは、その世代特有の悩みも共有しています。例えばスマホとの付き合いなどはその典型例でしょう。現在中堅からベテランの指導者の受験生時代には、スマホは高校生にまではそこまで普及していませんでした。スマホに熱中して勉強時間が…といった悩みなどほとんどなかったのです。

2.境遇の近い人を参考にする

例えば自分が地方の公立高校に通っているならば、同じ様に地方の公立高校出身者の方の情報は非常に参考になるでしょう。自分が首都圏の進学校であれ、いわゆる自称進学校であれ、高校の取り巻く状況が似ているならば、通う生徒の状況も似てきます。

また、自分の志望校と同じ大学生ではなくとも、それよりも少しレベルが上の大学に通っている大学生であれば参考にすることができると思います。少し上のレベルの情報を知ることにより、勉強の上限を把握できます。例えばその大学生が青チャートを使っていなかったのであれば、それより下のレベルの自分は無理して青チャートを使う必要性が無いことが分かります。

 

基本的に大学生の方々は善意で情報発信をしています。実は善意だからこそタチが悪い場合も多々あるのですが。かなり優秀な方でも、若い時には自分の経験や知見が正しいと勘違いしてしまいます。もちろん私も例外ではなく、講師を始めて2,3年は反省すべきことだらけでした。